☆ピットの信号長とJitter,Beta,TA Test


ピット(記録面に刻まれた記録跡)には規格で定められた10種類の長さが存在し、
このエッジ(端)を読むことでDVDに記録されたデータは0と1のデジタル信号に変換されます。
下図のように、3T〜11Tまでの長さの9種類のピットと14Tの長さのピットを組み合わせてデータが記録されています。

上図の信号は@を正常に形成されたピットとして、A〜Cまでを問題のある例として挙げたものです。
このピット列は、7Tのピット、3Tのランド、5Tのピット、11Tのランド、5Tのピット、6Tのランド、3Tのピットと並んでいます。
(そんなこと見れば判ることですけどね)
DVDの記録信号はポジション記録方式ではなくエッジ記録方式を取っており、
ピットとランドの切り替わり部分を1と認識し平坦な部分を0と認識することは前の項で少し触れました。
つまり、この例のピット列の場合、データは、
0000001 001 00001 00000000001 00001 000001 001
というように認識されるわけです。
これらの知識を基に、Jitter、Beta、TA Testが一体どういうものなのかという事について触れてみます。

Jitter、Beta、TA TestはPlextools等で計測が可能な値で、記録面の信号を読み取ってグラフ化したものです。
あくまでも信号の状態ですから、復号後のエラーとは必ずしも一致しないものですが、
必然的にこれが悪くなるとディスクの品質も高くなりやすいといった傾向にあるようです。
エラーコレクションコードにより訂正された際の情報を読んで返すPI/PO等のエラー情報とは異なり、
エラーコードを読み取る前、つまりディスクから読んだ直後の信号の状態を検出するものであるため、
PI/PO等の計測を
エラー訂正過程におけるデータへのデジタル面からのアプローチと捉えるならば、
JitterやBeta等は
データの記録されたディスク面の状態への物理的なアプローチと言えるでしょう。
これらの、特にTA Testの結果が悪い値を示すディスクは、記録面に刻まれた信号が乱雑であるわけですから、
例えエラー計測の結果が良かろうとも決して良好な品質のディスクとは言えません。

Jitterとは、記録面のピットの時間方向へのブレの度合いを示したものです。
時間方向って言葉を使うとわかりづらいかもしれませんが、要は記録信号が前後にずれていないかという事です。
たとえば、上の図に示したAの例を見てください。
@の例が正しい信号だとすると、Aはピットの書き始めと書き終わりのレーザー出力の調整がうまくいっていないため、
前後に少し信号がブレてしまっているのが判ります。
こういったブレの度合いを示すのがJitterで、Aの例はJitterの値が高くなります。
エラーとの直接の関係はありませんが、ピットを誤読してしまう可能性があるためこれが大きすぎると
エラーも高くなってしまったり、もっと酷いとデータが読めなくなってしまったりします。
BenQ系のDVDRWドライブやDVD-ROMドライブなどは高Jitterのディスクに弱いという説があり、
この値が一定以上に高いディスクを読もうとすると大量にPOFを検出してしまうようです。
また、信号が前後にずれるわけですから、片方のエッジがずれるような状況ではTA Testの結果も悪くなります。
半アナログ的な技術で固められたCD-Rの場合は、これにより音質の変化が起こる〜なんて事があったらしいんですが、
DVDの場合は信号はエラー訂正等を経てデジタルデータとして読み出された上でデコードされますので、
これによって音質や画質の変化が起きるという事は規格的にあり得ません。

Jitterが落ち着いており良好な例(青がJitter、赤はBetaです)



変動が大きく、右上がりになっている良くない例





家庭用のドライブではPLEXTOR系ドライブとLITEON系ドライブでのみ計測が可能な値で、
記録面のピットとランドの深さの均整を見て、書込みの際のレーザー照射の強度が適当であったかを
判別し強弱の度合いを±で示した値です。
例えばBの例のように、明らかにピットの形成が甘い(レーザーの出力が十分でなく、焼き跡が不十分)
場合はマイナス方向へ大きく傾いてしまいます。
これが全体的に少しくらい強すぎる程度なら問題が起こることは少ないのですが、
マイナス方向へ大きく傾いていると、ピットが浅く読み取りにくくなっているという事になりますし、
ある点を境にこれが大きく変動していたりすると、ピットの急激な変化が読み取りに影響を与えることがあります。
±0か少し+寄りになっている程度で、全体を通して急激な変動が見られないのが理想的であると言えます。

良い例(赤がBeta、青はJitterです)



少し低めに出てしまっており、ギザギザしていて微妙な例



全体を通して大きく変動している悪い例


このテストは記録面に記録された各Tの信号を出現頻度としてグラフ化したものです。
青いグラフ(ピットT頻度グラフ)はピット部(記録跡)の信号長の出現頻度を示し、
赤いグラフ(ランドT頻度グラフ)はランド部(記録跡の無いスペース部)の信号長の出現頻度を示します。
各信号はTの長さが短いものほど使用される頻度が高くなっています。
これらの信号はJitter、つまり時間方向のブレが発生すると長さが曖昧になってしまいますね。
Cの例を見ると、各ピットが少しずつ長くなってしまっており、
それに呼応して否応無くランド部分は少しずつ短くなってしまっている状態です。
こういうような状態では、上のピットを示す青いグラフは長い方・・・つまり右側に、
下のランドを示す赤いグラフは短い方・・・つまり左側に各信号が偏ってしまうわけです。
理想的なのは各信号にずれが少ない状態…つまり山が尖っており、隣とくっついていない状態です。


隣り合った山がはっきり分かれており、信号の状態が良好な例。



隣同士の山がくっついてしまっており、良くない例